カルガモはどこへ行く?

5月中旬、本学の中庭にある小さな池の真ん中に、ほんの小さな島がある。そこでカモが卵を抱いていた。どこからやって来るのか不思議ではある。普段は、居ないのにこの季節になるとやって来て卵を抱いている。ここ3年連続で来ている。顔を見ても、いつも来ているお馴染みさんなのかどうか分からない。それとも毎回、違う鳥が仲間からあそこは産み易いと教えてもらってきているのだろうか。

一昨年は、うまくかえって可愛いヒナが親の後ろについて泳いでいた。去年も同じ頃に卵を産んでいた。ところが、去年の親鳥は薄情で、卵を産んだのはいいが、そのままどこかへ行ってしまった。卵を抱き続けているのも、ええ加減いやになったのか、もともと遊び好きな親だったのか、どこかへぶらっと出かけていなくなった。卵だけが無惨に残っていた。完全な育児放棄、いや卵からヒナにかえっていないのだからなんと言ったらいいのだろうか。卵放棄? ひょっとしたら、一部の人間の親を真似たのかも。なかにはヒナを虐待する親もいるようである。鳥も人間並みになってきたのか。

今年の親鳥は健気に抱いていた。そして先月、9羽のヒナが生まれた。奇しくも、我々が気づいたのは一昨年も、今年も5月21日。池の中には、大きな真鯉や小さな鯉が何匹かゆったりと尾ひれを揺らして泳いでいる。その上を生まれたばかりの子ガモが、小さな足を慌ただしく動かし、水を掻いて親の後ろに必死でくっついていた。水面をところ狭しと元気に泳ぎ、時に潜水も披露。先生に引率されて東大阪大学附属幼稚園の園児、近くの保育園の子どもたちがやってきて、親鳥の傍を素早い動きで付いて廻るヒナを見て「カワイイ、カワイイ」と歓声を上げて大騒ぎしていた。

ところが、翌日の昼には居なくなっていた。朝には居たのを目撃している人がいる。親が一列か、二列に並ばせて、校庭を横切って、どこかへ引っ越したのである。一昨年も同様。まったく不思議である。以前に何羽かのカモが近くの川に居たのを見たことがあるので、そこへ連れて行ったのだろうか。どのようにして移動するのだろう。途中、車も通っており、そこを横断しているはずである。防犯ビデオならぬ“カモビデオ”をセットして、その動静、行方を知りたい気持ちだ。引っ越し先で、無事に親子水入らずで過ごしているのだろうか。いや、水はいるが。

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