
教員採用試験に現役合格! 実践食物学科の学生に突撃インタビュー
東大阪大学短期大学部 実践食物学科の柴村瞳さん、中川早智さんが、中学校家庭の教員採用試験に現役合格しました。
家庭科の先生に憧れ、短期大学からの挑戦。努力を続け、苦しいときも励ましあいながら、ついに夢を叶えたおふたりに話を伺いました。(インタビュー日:2021年11月)
―― 家庭科教諭を目指したきっかけを教えてください。
柴村さん 私は中学1年生の時から家庭科の先生になるのが夢でした。中学校の家庭科の先生に憧れたからです。その先生の授業が本当に楽しかったんです。調理実習を多く取り入れてくれて、さらに生徒が楽しめる内容でした。手打ちうどんをみんなで作ってみたり。
あと中学校3年生の最後の授業では、班ごとに自分たちでメニューを決めて調理しました。私の班はロールキャベツを作りました。生徒の自主性にまかせた、なかなか中学生では経験できない授業でした。今振り返ったら、すごいことだなって思います。自分だったら全員同じメニューでやりたいなって思うし、材料などの仕入れも大変だし。自分にもできるかな?って。
そのおかげで、家庭科の授業に興味を持てたというのが1番大きかったです。さらに先生は私の所属するバスケ部の顧問でもあったので、ただ指導するだけじゃなく一緒にやってくれる、というところがいいなあと憧れを持ちました。
中川さん 私が家庭科の先生になりたいと思ったのは、高校3年の6月で、進路選択のぎりぎりだったので、結構いろんな先生に怒られました(笑)。もともと中学生からずっとファッションの専門学校に行きたいなと思っていて、総合学科の高校に進学しましたし、行きたい専門学校も決まっていました。
進路変更のきっかけは、高校2年生からお世話になっていた家庭科の先生の授業がすごくおもしろくて、私もその先生みたいに家庭科をおもしろく教えたいなと思って、目指すことに決めました。
1番思い出深い授業は、高校3年生の時の「食文化」という授業です。日本だけでなく世界の郷土料理についての授業なんですが、先生が実際旅行に行ったときに、「これ食べておいしかった」とか「これ見た」とかそういう話をしてくれたんです。
「食文化」だけど食のことだけじゃなくて、その地域のこともいろいろ教えてくれたから、本当に旅行してるような気分になれて、わくわくしました。
調理実習も独特で、タピオカやチーズナンを手作りしたり、無印良品のインドカレーを買ってきて、「グリーンカレーをみんなで食べてみよう」とか(笑)。それが本当に楽しかったです。
―― なぜ4年制大学ではなく短期大学に?
柴村さん 家庭科教諭の免許が取れる学校が少なかったので、取れる学校を探してオープンキャンパスであちこち見に行きましたが、ほぼ4年制大学ばかりで、短期大学はここだけでした。
直感というか、うまく言えませんが、東大阪大学短期大学部に魅力を感じ、決めました。
―― いざ入学してみて
柴村さん 本当のことを言うと、短期大学で教師になれるかなっていう不安は、めちゃくちゃありました。今まで出会ってきた先生も4年制大学出身だったし。
でも入ってみたらあっという間に不安もなくなって、教員採用試験に向けて先生にたくさんサポートしてもらいました。テストに向けて問題を提供してくれたり、面接の練習もたくさんしてくれて、さらに授業もとても楽しいので、本当にこの学校に来てよかったなと思います。
中川さん 私は福岡県出身なのですが、親元を離れて、知らない土地で、短期大学で、って不安なことはいっぱいあったし、短期大学で教職を、ってなると実際、時間割が詰まっていて、結構しんどかったけど、同じ教職を目指す友達や同じ学科の友達がすごく優しくて、そこに支えられました。
あと柴村さんも言ってましたが、4年制大学に行って教職の勉強をして、教員採用試験を受けて先生になる、っていうのが王道だけど、自分たちは短期大学2年間で、しかも現役合格も難しい、ってずっと言われてたし、現場に行っても周りより若いからいろいろと難しいと感じることもいっぱいあって、正直めちゃくちゃ不安でした。でも普段の授業で食物について重点的に習っていたから、教員採用試験に役立ちましたし、この大学に来てよかったなって思います。
―― かなりハードな様子ですが、くじけたときは?
柴村さん あります。何回も(笑)。
教員採用試験は6月にテストがあるので、それまでに習う範囲を間に合わせないといけないから、1年生から勉強を始めないといけなくて。だから全部独学なんですよ。そこが本当にきつくて。全然わからないし、点数も上がらないし。そこでくじけたんですけど、中川さんががんばっているのを見て、私もがんばろうって乗り越えられました。
中川さん 私は今住んでいる京都市と地元の福岡市とどっちも受けたので、大変でした。
高校が総合学科だったっていうのもあって、国語や歴史など一般的な勉強を高校1年生くらいからしていない状態で、一般教養の勉強が始まったり、教職教養も全然わからないし。
自分で問題を解いてみて「今回結構いけたかも!」って答え合わせをしたら、半分も取れてないとか。そういうのが気持ち的にしんどかったですね。
それこそ柴村さんだったり、地元の友達も同じ時期に就活でめちゃくちゃ苦労していて。みんなががんばってるから、私もがんばれました。
―― おふたりは仲がいいんですね。
中川さん 入学してからすぐに「教職取ってる?」「取ってる!」みたいな(笑)。
学校帰りの電車が柴村さんと一緒だったこともあって。その時によく教職の話をしました。
―― 教育実習について聞かせてください。
中川さん 教育実習では、授業をさせていただいたり、指導案の作成をしました。
実習生が私を含めて8人いたんですけど、それぞれクラスに入って、学級活動に参加したり、給食を一緒に食べたりして、3週間過ごしました。
初日から授業を受け持ちました。授業では、その前の授業で出されていた課題の答え合わせをしました。ミシンの各部位の名称だったり、縫い方の説明とか。丸付けしながら説明をしていくという内容でした。とても緊張しました。
最後の査定授業では、「災害時の非常用持ち出し袋の中身をみんなで選ぼう」っていう授業をしました。内容について先生に褒めていただきました。生徒たちの反応も、「私はこれ入れたい。だってこうだから」って自分の意見を言ってくれたりして。選ぶための授業だから、先生の話を聞くだけの授業ではなく、自分たちも参加できる内容だったので、すごく楽しそうにしてくれていました。
3年生の授業の時に失敗してしまったことがあって。私は見学だけで、声掛けをしてみるという形での参加だったんですが、みんなで2年生の時に作った紙飛行機を飛ばしてみようっていう授業で、ずっと座りこんでいる生徒がいたんです。体調が悪いのかなって思って「体調悪くない?大丈夫?」っていう声掛けをしていたんですが、実はその授業の前に行われた小テストがうまくいかなかったから落ち込んでいたんです。それに気づけなくて。申し訳なかったし、足りてないなって。失敗してしまって、次からの授業が怖くなってしまったりもしました。
授業を受け持つ大変さも感じましたが、クラス全体が楽しそうにしていたから「みんな楽しんでる!いいな!」って思っていたけど、実際そうでもない生徒もいる。全体が楽しんでいたからこの授業はよかったね、ってことじゃないんだなって気づきました。
柴村さん 初日はオンラインでの全校集会であいさつから始まりました。緊張しました。
私はカメラに向かって話しかけるんですが、生徒の顔が見えないので反応がわからず、私の言葉が伝わっているのか、イメージが持ちにくかったですね。
実習の間は授業に入ったり、放課後部活に行ったり、体育祭が近かったので学級旗を一緒に作ったりしました。
やっぱり授業をすることが1番楽しかったです。授業のたびに反省することばかりなんですけれど、自分の好きな科目を教えることは楽しいな、って喜びを得ることができました。
―― ふたりとも憧れた家庭科の先生がスタートでしたが、いざ受け持ってみるとどうでしたか?
中川さん 思い通りにいかないなっていうのが大きかったです。
私が憧れていた先生の授業って、かなりの準備が必要で。だけど実際準備の時間はそんなにないし。仕事を早く済ませることだったり、優先順位をつけたり、そういう基本的なことができるようにならないと、その先生みたいな授業はできないなと感じました。
柴村さん 憧れた先生と同じテーマの授業をしてみても、私には足りないところが多いなって思って。
実習では、それまでの流れもありますが、授業内容を自分で考えて、指導教諭に相談して、それで行こうって認めてもらってから教壇に立ちます。私は、保育園・幼稚園・認定こども園の違いとか、ミシンを使ったかばん作りなどをしました。
最初の授業は戸惑ったり焦ったりしましたが、やるたびに先生からの講評をいただいて、改善して次に、次に、ってつなげていけたので、最後の授業はうまくできたかなと思います。
その最後の授業では、加工食品について取り上げました。加工食品の意味や、主な加工食品について、また加工食品を普段の食事に取り入れることで、自分で調理することが少なくなってしまうので、それの問題点とかをみんなで確認したりしました。
でもやっぱり教師の大変さが1番の気づきでした。
―― いよいよ4月から憧れていた家庭科の先生になりますね。
中川さん まず現場になじむ、っていうのが1番大事かなって思っています。新任で、生徒とも年齢が近いし、どうしても距離が近くなっちゃうことがあるから、そこはしっかりと自分の中で折り合いをつけて、いい意味でお姉ちゃんだったり、お母さんみたいな、そういう先生になりたいなと思っています。
柴村さん 実は、自分が憧れてた先生が教育実習の指導教諭だったんです。その先生が私に「生徒がいる時間は生徒と向き合う。常に熱い気持ちをもった教員になってほしい」という言葉を贈ってくれました。先生自身がモットーにしている言葉でもあるので、少しでも近づけるように全力でがんばりたいです。
―― 将来の目標を教えてください。
中川さん 今から年齢と経験を重ねていくにつれて、自分の中でもできることの幅が広がってくると思うので、今まで経験してきたことを活かして、私が憧れた先生みたいに、それを生徒にしっかり還元できるように努力していきたいです。
柴村さん 私が担任を持ったり、私の家庭科の授業を受けた生徒たちが、教えたことを日々の生活の中でちょっとでも活かしてくれたらうれしいなと思うし、先生が担任でよかったって思ってもらえるような人になれるようにがんばりたいです。
―― 夢を持ち続けて努力し実現できた今、悩んでいる高校生に伝えたいことはありますか?
中川さん 短期大学2年間で教職を、ってたぶん高校の先生も驚くと思うし、自分も不安だと思うし、保護者さんも不安だと思うんですよ。みんな不安になるだろうけど、実際私たちもすごい不安だったし。
でも、私はがんばったらなれる、というか叶ったので、短期大学だからダメなんじゃないかな、と思わずに、ちょっとでも可能性があるならあきらめないで、夢に向かってがんばってほしいです。
柴村さん 私は何をするにしても、自分の中で目標を持つことを常に忘れないようにしています。この大学に来たことも「教師になるために」っていう目標を持っていたからだし。
今、夢が叶ったけど、教師としてまた新たな目標が生まれるし、日々目標を掲げるっていうことが自分のがんばれる源にもなるかなって思います。
目標を持つことは大切だと伝えたいです。