初夏のキャンパス

20140708 住吉大社の境内には、比較的大きな田がある。近隣の人々は“御田<おんだ>”と呼んでいる。5月初旬には、御田一面にレンゲが咲いていた。蓮華の花の美しさと同時に、どこか極楽の雲の上のような景色であった。5月5日のこどもの日には、あいにく雨のため開放された御田に入っていた親子は少なかったが、例年は多くの家族連れがレンゲ摘みを楽しみ、子どもたちは、泥だらけになって遊ぶのである。

 5月末、耕運機が入って、畦が作られた。そして6月上旬に水が張られると、突如として、その日の夜から蛙の鳴き声が聞こえてくる。蛙にしたら、この日を待っていたというところか。毎年、これが不思議である。今年も、8日に水が入れられたら、その夜から歓喜の合唱が始まった。かなり遅くまで蛙の声が聞こえ、深夜になると疲れてしまうのか眠ってしまう。その時、いつも私は季節を感じる。

 我が東大阪大学・東大阪大学短期大学部でも同様である。5月末から6月になると、どこからともなくカルガモがやって来て、キャンパスの小さな池で遊び、そして卵を産んで温める。今年も先月、やって来た。その小さな池の真ん中には、ちょっとした小島があり、そこで卵を産み温めるのである。毎年この季節になるとやって来るとはいうものの、顔が一緒なので、いつも来ているお馴染みさんなのかどうか分からない。それとも毎回、違う鳥が仲間からあそこは産み易いと教えてもらってきているのだろうか。

 学生も我々も、いつ孵るのかと心待ちしていた6月中旬、9羽の子どもが誕生。親の後をついて池やその周辺を、ちょこちょこと泳ぎ、潜水を披露したり、時に陸に上がって走り回っていた。学生はもちろんのこと、先生に引率された東大阪大学附属幼稚園の園児たちも大喜び。親鳥の傍らを素早い動きで付いて廻るヒナを見て「カワイイ、カワイイ」と大騒ぎしていた。そしていつもの如く我々の知らぬ間に、親に連れられ、どこかへ引越した。ところが、今年は思わぬ異変があった。親は、うっかり子どもの数をかぞえなかったのか、なんと1羽だけ取り残されたのである。このままでは子ガモは生きていけない。子ガモが多くいる所があり、そこなら大丈夫と聞いた職員の一人が、朝の5時に起きて子ガモを保護して、車でそこへ運んだとのこと。

 一方、学内にある女子寮の前には新入生が植えた赤、白、紫、えんじ色など鮮やかな花が、音楽棟(ピアノ棟)の前には授業の一環で上級生が植えたサルビア、マリーゴールドが美しく咲いている。夕方、ビニール袋を持った学生会・学友会の学生が、自主的にキャンパスを清掃してくれていた。カルガモの赤ちゃん、学生の植えた花、そして清掃、美しさとともに、喜びと夢を与えてくれる。

 そんなある日、いつもの自由な服装の彼ら全員がスーツ姿、いわゆるリクルートスタイルであった。その日は、キャリア教育の一環である外部講師によるマナー講座。実習に行った時、ボランテイアに参加した時をはじめとして、さまざまな場における礼儀、マナー、さらには将来の社会人としての在り方の指導が行われていた。これまた、彼らの夢を実現するためである。

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